2016年8月2日・早稲田大学団交報告
(日本語非常勤インストラクター問題に関して)
8月2日19時30分からおよそ1時間半にわたって、早稲田大学当局と主として日本語非常勤インストラクター問題について団体交渉がありました。
I . 組合員Iさんのコマ数問題について
組合との合意により再雇用された組合員Iさんに対し、本人が希望していたのとは異なり、集中講義0.2コマ分しか配当されなかった問題について、早稲田当局は
1.
日本語教育センターが日本語非常勤インスラクターに対し2016年度に配当できるコマ数は2015年度よりも9コマ増え、382コマであること。
2.
日本語教育センターは、あらかじめ、日本語非常勤インストラクターに希望する曜日、時間、レベル等の希望を聞き、日本語非常勤インストラクターが「〇」をつけたコマを配当するが、その際、継続嘱任(前年度と同じコマを担当すること)を希望したインストラクターを優先して配当を行っている。
3.
その結果として、現在のところ、上記382コマはすべて埋まってしまい、I組合員の希望する担当コマ数を割り振ることができなかった。
4.
しかし、例年、担当コマ決定後に、インストラクター側から「都合が悪くなった」とキャンセルがあり、10コマほど追加募集枠が出て来るので、組合を通じての要望があったことを踏まえ、追加募集の段階で、I組合員が応募してくれれば、要望ができるだけ満たせるように配慮する。
という回答がありました。
II. 日本語非常勤インストラクターの待遇改善問題について
すでに非常勤講師の待遇改善に対する「合意」の時点で積み残しになっていた「日本語非常勤インストラクター」の待遇改善問題については、早稲田側から、
1.
島田陽一副総長は「日本語非常勤インストラクター」の待遇改善について前向きに検討すると回答しており、それを尊重するという意向に変わりはない。
2.
但し、現在、日本語常勤インストラクター(任期付)等、他の職域との関係も含め、そもそも日本語非常勤インストラクターの職務や地位について学内で検討中であり、学内の諸会議などを通さなければならないため、具体的な「待遇改善」の「額」まで含めた回答ができるのは、10月以降となる。
3.
また、それ以前に、労働基準監督署から、2016年春に届け出た「日本語非常勤インストラクター就業規定」が、労働基準法89条に定められた「就業規定」としての要件を満たしていないという指摘を受けており、「就業規定(規則)」そのものを改定する必要がある。
との説明がありました。
首都圏大学非常勤講師側は、これに対して、
1.
2003年の時点で文科省は「私立大学非常勤講師の補助単価」を、従来の
「1時間あたり3400円から5100円」
に大幅アップしており、また、同年、内閣委員会で川橋幸子議員の質問に答えるかたちで河村健夫文科副大臣は、非常勤講師の俸給は、
「講義時間以外にも講義のための準備や学生に対する研究指導等も行う」
ことがあり、講義時間の「だいたい3倍弱」を基準とするという発言を行っている。
2.
ところが、日本語非常勤インストラクターの場合は、早稲田大学側は日本語教育に対し従来から極めて重要な役割を与えていると主張しているにも関わらず、講義時間の3倍に準じた額を俸給単価とするという考えに従えば、東京都の「最低賃金」にも満たない。
3.
労働契約法において期間の定めがあることを理由とする不合理な労働条件が禁止され、
①
任期の有無や、常勤・非常勤の差異による役割や職務内容の違いを明確にし、
労働条件が異なることが合理的に説明できる状態である必要がある。
②
上記①の役割や職務内容の差によって、格差を説明できない労働条件(手当等)が存在しないか確認する必要がある。
4.
例えば、日本語常勤インストラクター(任期付)の月額給与は早稲田側の説明によれば、「36万円以上」となっており、ほとんど同じ職務を果たしている日本語非常勤インストラクターとの異常な「格差」は、とても合理的に説明できるものではない。
・・・
等、具体的な法的・社会的根拠を挙げて、日本語非常勤インスラクターの待遇・給与を大幅に改善するように迫りました。
これに対する早稲田当局の説明は、
1.
そもそも日本語常勤インストラクター(任期付)も、日本語非常勤インストラクターも、専任教員の「講義の補助」として「実習」を担当してもらっているにすぎない。
2.
授業を担当し、単位を与えるのはあくまで「専任教員」であり、また、非常勤講師とも「職務」や「身分」が違うので比較対象にならない。
といった支離滅裂なもので、高度な「授業」を自らの責任で担当している「日本語非常勤インストラクター」の実態を無視し、また従来「日本語非常勤インスラクターは講義を担当している」という早稲田側の団交答弁とも矛盾する内容でした。
そもそも、早稲田側は、団交前半ではI組合員に対し「集中講義」を担当してもらうよう要請していると言っているのですから、話にもなりません。
今回の団交では、これ以上の討議には発展しませんでしたが、早稲田側は、
1.
早々に「改定」を予定している「日本語非常勤インスラクター就業規定」(就業規則)を組合側に提示し、組合との緊密な連絡のもとに「改定案」を策定する。
2.
10月の日本語非常勤インストラクターの待遇改善についても事務折衝の場を設け、組合の意向を最大限尊重する。
ことを約束しました。
日本語非常勤インスラクター問題は、極めて重要な教育を担当しながら、その職に見合う賃金を支払わず、極めて恣意的に設定された「職務」区分を設定して「最低賃金」にも満たない愚弄的な給与で働かせるという、私立大学の「非正規職」のあり方を象徴する存在であり、組合としても最重要事項として取り組んでいます。
早稲田大学とは、非常勤講師の5年上限問題・待遇問題ついては当面「和解」が成立したものの、文部科学省が2005年わざわざ通達(「大学において請負契約等に基づいて授業を行うことについて」大振-8 :http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/027/siryo/06021607/034.htm)を出して禁止し、また、組合から再三の抗議にも関わらず、早稲田大学の完全子会社に正規の科目を「丸投げ」している早稲田大学アカデミックソリューション問題と並び、日本語非常勤インストラクター問題が解決しなければ「早稲田問題」が解決したとは到底いえません。
早稲田大学から大幅な譲歩を勝ち取り、早稲田の非正規雇用教職の待遇を抜本的に改めさせるためには、一人でも多くの非正規教職員が組合に加入し、結束して要求を突きつけていく他はありません。
日本語非常勤インストラクターの皆さん。
皆さんの運命は皆さんの決断にかかっていると言っても過言ではありません。
一層の結束とご協力を賜りますようお願い申し上げます。