早稲田大学との和解とその意義
首都圏大学非常勤講師組合・早稲田ユニオン分会
首都圏大学非常勤講師組合・早稲田ユニオンと早稲田大学とは2015年11月18日に東京都労働委員会の仲介で包括和解協定を結び、また2016年3月28日に主として賃金問題について和解協定を締結し早稲田大学理事会から組合側の「完全勝利」ともいうべき画期的な譲歩を引きだしました。
具体的には、まず、2015年和解において、
1.
2014年3月31日以前から大学に務めている非常勤講師についてはいわゆる「5年上限」を撤廃し、無期雇用を認める。
2.
日本語非常勤インストラクターの5年上限を撤廃し、70歳定年までの就労を認める。
3.
また2014年3月から5年上限を理由に雇い止めされた日本語インストラクターについても希望者全員を従前通り最高額の給与で復職を認める。
4.
コマ数制限を当面10コマ制限にまで緩和する。
5.
非常勤講師の契約期間をもとどおり3月31日までに戻す。
6.
半期(セメスター制を含む)のみ契約の非常勤講師についても、労契法で認められたクーリング・オフ期間とは見なさず、餞別金支給の対象年に算入する。
7.
商学部で「偽装請負」によってコマを減らされた二人の外国人講師について、相応の金銭補償をする。
また、2016年和解合意では、
8.
外国人講師給の有資格者でありながら、従来日本人講師給を支給されてきた外国人にも、旧外国人講師給に倣って「調整給」を支給する。これによって大学調べで少なくとも100人以上の外国人講師が1コマにつき年収10万程度の大幅な昇給の対象となります。
9.
なお、全ての外国人講師が月給制となり、「調整給」も月給に上乗せして支払われる。
10.
日本人講師について、2013年水準での10%賃上げを2年(17・18年の2年間それぞれ前年度比3.3%賃上げ)で達成し、1コマ当たりの月給を30800円(49歳以下)、33110円(50歳以上)とする。
11.
さらに2018年から出校手当を1コマ当たり3000円の割合で月給に繰り入れる。これにより1コマ33800円または36110円となる。これで2コマ未満の人にも「不利益変更」なく出校手当の繰り入れが実現し、3コマ以上担当者にはその分の賃上げが実現する。
12.
旧外国人講師給と一般講師給(旧日本人講師給)との差をなくし「調整給」なしで両賃金体系の差を無くすことを「努力目標」とする。つまり完成年度の定めこそないものの、日本人講師給を旧外国人講師給の水準まで引き上げることを「公約」する。(これが実現すれば1コマの上限は、月42800円となる)。
これにより20年前の組合結成以来の目標である1コマ5万円が実現する射程が見えてきましたその他、まだ協定化されていないが団体交渉では以下の点が確認されました。
13.
2016年には間に合わないが、2017年以降は非常勤講師にも健康診断受診を認める。
14.
17年度から1コマを2時間と計算して週20時間を越える非常勤には社会保険・年金への加入を認める。
15.
16年 3月和解に沿った就業規則では、日本語インストラクターの待遇改善については他の非常勤講師並の2%賃上げに留まっていますが、2月の団交の席で島田陽一副総長は、別途、今後の交渉でさらなる待遇改善に向けて考慮する意向を示しています。
これによって2015年和解では、一部を除いて一応2013年以前の状態に戻すことを早稲田側から約束させ、さらに2016年和解では、非常勤講師の賃金について、ほぼ組合の主張通りの要求を早稲田に認めさせたことになります。ちょっと前までは考えられなかった成果で、早稲田闘争は「完全勝利」に一歩近づいたことになります。
ただ早稲田大学では、依然として、未解決問題も山積みしています(以下、問題点を列記)。
1.
2014年4月以降採用の非常勤講師に大学教員任期法で10年の上限が付けられている。
2.
高等学院など附属高校などの非常勤に5年上限が付けられている。
3.
賃金が非常勤講師の半分以下の日本語インストラクターの待遇改善問題。
4.
日本語非常勤講師の労働条件不利益変更、「個人請負」(一人親方)的な働かせ方などが新たに明かとなった。
5.
専任との福利厚生面での待遇格差を無くさせる。
6.
教員証や「科研費」申請等での専任との格差を無くさせる。
7.
組合事務室の供与を認めさせる。
8.
コマ減問題をめぐるKさんに対するハラスメント問題処理の異常性。
9.
早稲田アカデミックソリューションの労働条件やハラスメント問題。
ただし今回、組合の要求が大筋で認められたことを評価し、組合が提起していた労働委員会への救済申立、国籍差別による労基署への告訴・告発、裁判等をとりあえず全て取下げました。
これにより早稲田大学と非常勤講師組合との紛争状態は終息し、早稲田大学と非常勤講師組合は今後正常な労使交渉を通じ「両者が協力して早稲田大学の発展に努めていく」ことになると思います。
早稲田大学の「勝利」の効果はすでに他大学にも広がっており、労契法・大学教育任期法等を理由にした5年上限、10年上限の撤廃や雇い止め、減コマなど撤回など様々な形で成果がでてきています。早稲田の「勝利」は3年前には10人に満たなかった組合員がこの間飛躍的に増大し早稲田ユニオンだけで160名、組合全体では500名に勢力が拡大したことが大きな要因です。
雇い止めや減コマ、その他労働条件の「不利益変更」、職場でのセクハラ・パワハラなど、「問題」が起きたときの「保険」の意味でも、まだ未加入の方は是非この機会に「首都圏大学非常勤講師組合」にご加入下さい。